妖魔06~晴嵐~
手刀をつくり、触手の真ん中へと差し込む。

そして、奥にある何かを掴んだ。

少し抵抗があったが、引き抜く。

手に掴んでいるのは妖魔のコアだ。

触手の妖魔も生き物で、腕には血液がついている。

俺は容赦なくコアを握り潰した。

コアを抜かれた時点でほぼ植物状態であるが、コアがつぶれた事により触手はしぼんでいく。

そして、触手の妖魔が死んだ事により、穴が開く。

穴の先は光に満ち溢れており、女が待っていたといわんばかりに立っていた。

「ち!」

咄嗟にクルトを投げ捨てた。

女は口が裂けるほどに笑い、唾液を飛ばしてくる。

急激な明暗の違いに目がついてこず、一瞬出遅れ、片腕に唾液が『刺さった』。

俺はバックステップで距離をとる。

「面倒くせえ」

唾液が固まり、針となって腕に突き立っている。

「きゃはは!いいわあ、とっても、爽快よぉ」

女は表情を崩す事なく、前髪をかき上げた。

赤の胸元の開いたロングのシャツと黒のパンツを着用している。

その風貌は娼婦のようだ。

「クルトォ、あんた、まだ私を止めるだとか思っちゃってるわけぇ?」

俺に飛ばされて寝転がってるクルトを冷淡な瞳で見た。

「とめる、だ」

自分の意思表示をしながら、ゆっくりと立ち上がる。

「なぁまいきぃ」

今すぐにでもクルトに襲い掛かりそうだ。

俺は、クルトを守る義務などない。

それほど、面倒くさい事はないからな。
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