妖魔06~晴嵐~
「ねえ、あなたは、クルトを守る義務なんてあるのぅ?」

女は狂った表情を変えず、俺に問いかける。

「面倒くせえ事を聞いてくるんじゃねえ」

俺は刺さった唾を抜き、放り投げ歩き始める。

「テメエとクルトの因縁なんざ、俺の知ったこっちゃねえ。そこをどかなけりゃ、殺す」

「改革派なんていうしょっぼーい組織に所属してる妖魔がよく言うじゃない」

「テメエのような弱い者しか甚振れねえような奴が吠えてるんじゃねえ。雑魚が」

俺と女との間は一メートル。

女は更に口を開けながら、笑う。

「きゃは、きゃひ、おもしろーい」

「姉さん」

クルトが消え入りそうな声を上げた。

別人を見ているかのような、そんな表情だ。

「オラがやるだ」

「余計な時間を取らせるんじゃねえ」

戦闘を開始しようと腕を上げようとする。

「やらせてあげればぁ?」

「あ?」

「でも、そろそろ、動けなくなるんじゃないかなぁ?」

俺は自然と膝を着いた。

「ほらぁ、無理せずに寝てれば、いいのよぉ」

女が頭の上に足を置く。

「きゃはは、不便よねぇ」

しかし、俺は女の足を掴む。

「テメエは、面倒くせえ能力を、使ってるんじゃねえ」

目を見開き、女の足を持ったまま地面に叩きつける。
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