妖魔06~晴嵐~
「クルトもひどいわねえ。止めてあげればいいのにさぁ。本当、あんたは何も成長してないじゃないのさぁ」

「お、オラは」

「黙れといってるのが、聞こえねえのか?」

震える足を叩きながら、再び前へと歩く。

「そいつには覚悟がねえ。それだけの話だ」

「あるだ!」

「口だけなら誰でも言える」

俺に言われなきゃ動けないようじゃ、必要はない。

敵は待たない。

誰かからの指示で対応していては遅い。

作戦を練る時間などもない。

そして、一番の要因は女はクルトの姉という事。

肉親と戦うには、それなりの理由がいる。

今のクルトにはそれなりの理由は見当たらない。

「テメエがやりあったところで、結果が見えてやがる。聞かなくてもな」

葉桜が何と言おうが、クルトには身内と戦うほどの覚悟はない。

「きゃひ、そうよねぇ、お兄さん、よく解ってるわぁ」

いつの間にか俺の前に立つ。

そして、顔面に裏拳を決められ、俺は壁に激突する。

「どぉ?とっても、気持ちいいでしょぅ?私はとっても感じたわぁ」

「くそ、が」

先ほどの一撃はそこまで重くない。

しかし、体がいう事を聞かない。

「は、は」

内臓から何かがこみ上げてくる。

俺はそれを吐くと、赤黒い血が地面へとこびりついた。
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