妖魔06~晴嵐~
「ほら、クルトォ、早く動かないとぉ」

女は、動けない俺の腹を蹴る。

「死ぬって、あんたが言ったんだよぉ?」

何度も、何度も、色んなところに蹴りを入れる。

「きゃひ、きゃひ、ムカツク奴を甚振るって、最高ぅぅ!」

内臓から、更に血がこみ上げてくる。

口から血が溢れ、服に血がついた。

まるで、病いを負った者の末期のようだ。

「クル、ト」

クルトに問いかけようとする。

しかし、中々口が動かない。

「あぁ?なぁに?」

俺の襟首を持ち上げ、口元に耳をつける。

「テメエに、最後に、一つだけ、聞いてやる」

「しぶといなぁ。でも、そっちのほうが、面白いかぁ」

頬をなめる。

「さぁ、いってごらんなさい、お姉さんも一緒に聞いてあげるからぁ」

「覚悟はあるか?」

「あらぁ、不思議ぃ。ないって言ったのは、あなたなのにねぇ。まだ、聞くんだぁ?」

女の言うとおり、ないといったのは俺自身だ。

しかし、俺が倒れたとしてクルトはどうなる?

姉に苦痛を味合わされるだけの存在に成り下がるだろうな。

本当のところ、どうなろうが知ったこっちゃないが、後味最悪の面倒くせえ展開以外の何者でもない。

「クルト、テメエに聞いてんだよ」

血の味がする口の中を通して、肺に空気を送りこむ。

「自分の家族を痛めつける覚悟はあるかって、聞いてんだ!」

叫んだ事により、内臓に痛みが走る。
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