妖魔06~晴嵐~
女の脳は何かが欠けている。

それは、誰が見ても解ることだ。

「クルトォ、あんた、本当にやるつもりぃ?」

「姉さんが、やめない限り、オラは」

「きゃひ、キャハハハハハハハハ!いいわぁ。あんた、相当いじめがいのある顔になってきたじゃなぁい」

姉妹の会話が進む中、毒の進行も進んでいっているのか。

解らないが、手遅れに近いのかもしれない。

「オラ達の、家族は、どうなるだ!?母さんや父さん、姉さんはどうなるだ!?」

「知らないわよぉ。私は好きなように生きるだけぇ」

「そんな」

他の家族を選択するのか、目の前にいる女を選択するのか。

クルトにとっては、どっちも家族である事には変わりはない。

普通、家族に対して取捨選択など出来はしない。

例え、姉が狂気に走っていたとしても、だ。

そして、涙で顔を塗りつぶしながらも考え出したのは。

「オラは、嘘を、つかないだ。今すぐ、手を離すだ」

クルトは手を上げた。

「きゃひ、きゃは、あんたも、こっち側に入るつもりなんだぁ?」

クルトの事を馬鹿にしているかのように、笑い飛ばす。

俺は女の手首を掴む。

「それが、間違いだろうが、正解だろうが、関係ねえ。テメエは、ここでやる」

生か死か。

女に中途半端な答えを求めてはいけない。

都合よく改心するというのなら、当の昔に何らかのきっかけがあって改心している。

女も生きてきた歴史が存在するのだからな。

しかし、その歴史の中で改心するきっかけが存在しない場合もある。

女の様子を見る限りでは、どのような説得をしても耳を貸さないだろう。
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