妖魔06~晴嵐~
女はすぐにでもクルトを始末するつもりか。

「くそ、が」

体をうつぶせにさせる。

何とか、転がるだけの力はあるようだ。

「だるまさんが、ころんだ」

再び、仰向けになる。

女とクルトの動きは止まる。

表面上の物の動きが止まるというわけだ。

健康な状態の者であるのなら、体が止まるだけだ。

しかし、表面上に心臓が現れたとするのならば、答えはおのずと出てくる。

女は大量の汗をかきながら、目だけを動かす。

女の心臓の動きは完全に止まっていた。

俺の魔力が続くのか、女の心臓が先に止まるのか。

「ぐ、ぎ」

動こうとするが叶わず、心臓は止まり続ける。

俺の容態も、危うくなってきた。

「テメエは、捨てる物を、間違えた」

そして、女は瞳孔が開き、生を失う。

その後に能力が切れたのだろう、女は地面へと倒れた。

「はあ、はあ」

体内の毒は消えた物の、体内へのダメージが大きすぎる。

放っておいても、放っておかなくても、手遅れか。

笹原妹がいれば話が別だが、望みは薄い。

ニオイは感じられないし、位置情報も定かではない。

「ち、ここまでか」

クルトは膝をついたまま、泣き崩れている。

姉に対しての行動を悔やんでいるのか。

どの道、後悔しか残らない道しかない。
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