妖魔06~晴嵐~
「はあ、はあ」

野川さんは膝をつき、荒く息をしています。

「使い慣れてないと、きついわね」

「おや、いつの間にチューニングしたんですか?」

「ここに来る前よ」

彼女はロベリアさんのコアを体内に入れているのでしょう。

ロベリアさんのコアはまだ生きていたようですね。

「おやおや、あなたが人間をやめる日が来るとは思いもしませんでしたよ」

「もしもの事があった時のために、ね」

「それはそれは、より強い相手との死地とのやり取りが出来て、うらやましい限りですね」

「あんたのは元より、チート技じゃない」

「残念な事に、チート技を使えば使うほど楽しみも減るんですよね」

それに、魔力がいくつあっても足りませんしね。

「魔力発散ナイフを作っといてよく言うわ」

大きく息を吐いて立ち上がります。

「風間、あんたには道を間違えてほしくなかった」

瞼を下げ気味で憂う顔は、両親に悩みを打ち明けるかどうか迷っている娘さんのようです。

摩耶さんも時々、今の野川さんのような顔をしていますね。

摩耶さんの場合、新しい歯磨き粉を買うかどうかの悩みなんですがね。

「しかし、相変わらず不気味ね」

「おや、お化け屋敷で楽しませられますかね」

「今のあんたが出たら、失神するから止めなさい。それより、そのままで戦えるの?」

「いえいえ、より死地に近づいて、思考も一層冴え渡りますよ」

「はいはい」

野川さんは鉄球を拾い上げ、私達は歩き始めます。

その場では風間さん一人が死地にたどり着いてしまいました。
< 179 / 278 >

この作品をシェア

pagetop