妖魔06~晴嵐~
奥に進む内に、瘴気が濃くなってきているような気がする。

「琴、大丈夫か?」

頭の上の琴を気遣う。

彼女だけは、防御システムを身に着けていない。

「丞ちゃんが琴を気遣ってくれたにゃ。幸せにゃ」

頭の上が暖かくぽかぽかしている。

瘴気が琴の周辺に近づけないでいるような感じである。

幸福の能力が発動したようだ。

背後にはアカ・マナフとクルト、子鉄の腕に組み付いているジャスミン。

そして、細い道から出ると、大きな世界に飛び出る。

瘴気の霧に見舞われているが、見えないほどではない。

しかし、顔をゆがめてしまうほどの重く気持ちの悪い物だ。

その中に二人の人間くらいの大きさの妖魔がいる。

真ん中にいるのは、椅子に座って目を瞑っているイヴァン=カナシュート。

その横には赤い学ランに初めて見る白い髪の黒いワンピースを着用した女。

「また、お前かよ」

いい加減諦めろといいたいところだ。

「最後まで俺は俺を突き通す」

白い女のほうは無言のまま、赤い目でこちらを見ている。

とても綺麗ではあるが、不気味さを帯びている。

だが、この二体を退けることが出来れば、たどり着く。

「よう、イヴァン。テメエのふざけた考えをぶっつぶしに来たぜ!」

奴を止めるための拳を握り締める。

しかし、イヴァンは目を開けることはない。

次の瞬間、紅い学ランの男は瞬間移動を行う。

「来るぞ!」
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