妖魔06~晴嵐~
「しかし、働くお姿はお似合いですね、葵さん」

「そのようなおべっかで私が満足すると思っているのか!」

葵さんは、泣き始めてしまいましたね。

バイトの待遇が悪いのでしょうか。

「山に篭り修行をしていたものの、残金が尽きて狩りをしようとすれば警察に追いかけられる。お嬢様の元には今更帰るに帰れない。く、お前のような外道に、私の苦しみなど分かりはしまい!」

泣きながらも、試食品を刺す爪楊枝を私に向けています。

「おや、変わってあげたいくらいアドベンチャーしてますね」

「赤城さん、この方は?」

マリアさんは葵さんの存在を知りませんでしたね。

「マリアさん、この方は葵さんといって、摩耶さんととても仲が良い方なんですよ」

「私はマリア=マティーと申します。少し、疲れているように見えます。葵さん、大丈夫ですか?」

「私は、私は、摩耶さんのメザシ料理が、食べたい」

摩耶さんの料理に取り付かれてますね。

摩耶さんも葵さんに食べてもらいたいでしょう。

「あの、疲れをとるには、しっかりした睡眠と、栄養食をとったほうがいいですよ」

「このような、このような優しさに特化した婦女子を連れてきて、私を戸惑わせるつもりか!外道!」

「おやおや、マリアさんの母性を身をもって体験しましたか」

彼女もまた、子供たちのように笑顔が絶えない生活を贈る事が出来るでしょう。

「それよりもだ、恩師・摩耶さんを悲しませないように、これを持っていけ!」

半額のシールを貼り付けた、私達の欲しい物があります。

「感謝はいらない。私は、恩師・摩耶さんさえ、喜んでくれればいい。決して、お前のような外道を喜ばせるためではない!」
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