妖魔06~晴嵐~
「今なら、今ならやれるだ」

息を荒げながらも、クルトは歩いていく。

それは、学ランの元でも、白い女の元でもない。

狙うのはイヴァンだ。

「馬鹿野郎!止めろ!今のそいつは何があるのかわかっちゃいねえんだ」

そして、とどめは千鶴でしか打てない。

「クルト、話を聞け!今、お前がやるべき事は、イヴァンを狙う事じゃねえんだ!」

クルトは話を聞いていなかったのか。

それとも、失態を拭うための行動を、イヴァンをやる事で軽減させようとさせているのか。

クルトの攻撃では、イヴァンは倒せない。

例え目を瞑っていたとしても、いつ目覚めるか分からない。

それ以上にクルトが死ぬ可能性のほうが大きい。

「ち!」

俺は白き世界の能力を発動させようとする。

「丞ちゃん、問題ないわ」

同じく動く事が出来ない子鉄が声を上げる。

次の瞬間、鉄球がクルトを捉え、横に吹っ飛ばす。

ロベリアの風の能力を使ったのか。

クルトの気が抜けた事に俺達の呪縛は解けた。

「クルト!」

俺はクルトの元へと走り出す。

クルトを抱えあげる。

「大丈夫か?」

クルトは気を失っているようだ。

「まったく、加減が難しいわよ」

鉄球を拾い上げて、構える。

いかにクルトを傷つけないかを気をつけながら、風で鉄球を飛ばしたのだろう。

白い世界でもいけたのだが、説得に時間がかかったに違いない。
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