妖魔06~晴嵐~
龍姫の世界に転移する方法はない。

転移術を使える妖魔がいるのかといえばいるだろうが、時間がないのだ。

どうすればいい?

「どうしたにゃ?」

「手詰まりだって思ったんだが」

その時、ある考えが浮かんだ。

俺は琴を片腕で抱きしめて、見る。

「ん?」

不思議そうに見ている琴は、俺と一緒にいるせいなのか、幸せパワーが身を包んでいる。

幸せパワーを利用出来る方法がある。

しかし、そんな賭けに巻き込んで良いものか。

そして、幸せパワーを出すのであれば、彼女を幸せな気持ちにしてやらなければならない。

だが、それは偽りだ。

騙すような真似をするのか。

「どうしたにゃ?」

琴が俺の頬をなめる。

「俺には、お前を騙すような真似は出来ないと思っただけだ」

「丞ちゃんは琴を騙そうとしてたのかにゃ?」

「お前の顔を見てたら出来ないんだよ。だから、困ってるんだ」

「丞ちゃんは、琴のことを考えてくれたにゃ?」

「そうだな」

「琴は、いつも皆に迷惑をかけてるにゃ。そんな琴の事を丞ちゃんは考えるにゃ」

「まあな。多少、困った能力を持ってるかもしれないけど、吟も琴の事を心配してたように、今じゃ俺もお前の事を心配してるんだ」

自分で何とかするしかないようだ。
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