妖魔06~晴嵐~
「長くは、もちそうにない」

イヴァンのところから出てきた時点で制限時間がついていた。

最初からこの方法をとっていたら、紅玉の死を回避できていたか。

いや、白い空間の制限時間が間に合わず、結局は同じこととなっていただろう。

龍姫は表情を変えず、詠唱を続けた。

何分経ったかはわからない。

まるで、般若心経でも聞いているかのような気持ちだ。

「な、に?」

全身に悪寒が走る。

白き世界に別の人物が入ってきた。

龍姫の背後から近づいてくる。

「イヴァン」

黒い服で身を包みながら、笑みを見せる。

死の音を立てながら近づいてくる。

龍姫も気づいている。

だが、まだ詠唱が終わらない。

「くそ!」

可能性を潰しにきたのか。

イヴァンは龍姫の背後に立つ。

そして、手刀をつくり、龍姫を刺そうとする。

紙一重でそれを回避する。

イヴァンの手刀によって、龍姫の髪がばっさりといかれる。

しかし、龍姫は詠唱をやめない。

なぜだ。

なぜ、俺を狙わない?

周りの者から殺していこうという魂胆なのか。
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