妖魔06~晴嵐~
白い世界が、消え去る。

周囲は一瞬にして、黒く染められた世界に変わってしまう。

そして、止まっていた時間が動き出す。

『何でだ?』

確かに、龍姫は能力を使ったはずだ。

まさか、悪い方向に進んだというのか?

「これでよい」

龍姫はそう呟き、腕を下げる。

すでに詠唱は終わって、石碑も消えている。

元の位置に戻ったのか。

『あれは』

俺の視線は倒れている俺を見ていた。

体から鉄球へと意思が移ったのか。

俺の体は砂のように粉々になってしまう。

形を保てないくらいに酷使していたらしい。

「丞ちゃん、これであやつに勝てる可能性の一部が出てきた」

微笑むと龍姫は膝を突く。

龍姫が使った能力の結果というのは、詠唱を省いたのではないだろうか。

その代償が龍姫の体力。

『龍姫!』

しかし、鉄球である俺は声を出せない。

イヴァンは詠唱を続けている。

次の瞬間にアカ・マナフがナイフを投げつける。

ナイフはイヴァンの頭に突き刺さる。

しかし、簡単に抜け落ちてしまう。

傷も一瞬で修復してしまい、意味をなさない。

「おや、病院に通う必要はなさそうですね」
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