妖魔06~晴嵐~
「おや、琴さんのおかげで死地に行く時間が延長されましたね」

「でも、まだまだ幸福にはたどり着けないにゃ」

しかし、乾さんは何事もなかったかのようにナイフを構えます。

痛みが鈍いのは分かりますが、長期戦はこちらが勝手に死地にしってしまいますね。

「仕方ありませんね」

私は片手でナイフを構えました。

再びこちらにむかって走ってきます。

「いやはや、あなたの死地へ行かせる執念、私にとっては好物といってもいいですね」

目に全神経を注ぎます。

「ですが、約束を放棄する気もありませんよ」

乾さんは間合いに入る手前でナイフを投げつけてきます。

私はそれを片手で弾くものの、彼女のナイフは上空に戻っていました。

糸でつないでいたのでしょう。

私は、彼女が急降下でナイフを突き刺そうとしたところを飛んで回避します。

そこで魔力が戻っている事に気づきました。

彼女の意識は自分の体の事には気づいていません。

私に集中しすぎて見失っているのでしょう。

しかし、傷の具合からして使えるのは一度のみのようです。

「はははははは!」

乾さんは喜びのあまり狂喜していますね。

「さあ、宴もたけなわですが、ここでお会計にしましょうか」

お代は乾さんを死地へと導くといったところでしょうか。

残念ですが、今の環境と状態で彼女の精神を戻す事などできません。

そして、捕縛する事もかなわないでしょう。

私も乾さんのほうへとむかっていきます。
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