妖魔06~晴嵐~
「では、参りましょうか」

「傷が治ってないにゃ!それじゃあ、不幸になっちゃうにゃ!」

「私の目的は死地に向かう事ですよ」

私は歩き始めます。

それが幸福かどうかなどは判断しませんが、目的である事には変わりまりません。

そして、彼女の目的は暴走する事ではありません。

彼女は目的を達成させなければなりません。

私の力ではかの地にたどり着けませんからね。

「琴の見立てじゃ、眼鏡の人は死ぬにゃ」

「おや、私の事を考えてくれるとは、ありがたい限りですね。しかし、私の見立てではまだもつでしょう」

鈍いとはいえ、死期が近づいているのは分かります。

「今、直せばどうにかなるにゃ」

「心配していただけるのはありがたいのですが、時間もありませんよ」

耳に届いてくるのは妖魔さんの団体行進の音ですね。

「では、参りましょうか」

「にゃあ」

彼女の物憂げな顔は美術館の肖像画に匹敵しますね。

乾さんの身を隠しておいて、私達は進みます。

その途中、家の塀に彼女の両親である乾雲丸さん、乾萌黄さんの傷だらけの亡骸が横たわっていましたね。

油断したわけではないのでしょうが、数で押されすぎたのかもしれません。

乾さんの気持ちを揺さぶった原因はそれだったのでしょう。

そして、彼女達の魔力をたどり、入り組んだ道に入った後に廃屋にたどり着きました。

扉は閉まっているようですね。

私はノックを行います。

「すいません、赤城と申しますがどなたかいますかね?」
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