妖魔06~晴嵐~
「いやや、パパまで、そんなんいやや!」

摩耶さんは私の服を引っ張ります。

引っ張る力が強いのは成長した証ですね。

「摩耶さん、あなたの目的は私の目的とは違います。それは最初から決まっていた事ですよ」

「パパ、ウチはずっとパパとおる!」

彼女のひたむきな気持ちは誰しもがうなづく事でしょう。

しかし、死地に行くとしたとしても、無駄死ににしかなりません。

「クルトさん、葉桜君がお待ちですよ」

私は摩耶さんの隣をすりぬけ、うずくまっているクルトさんに話しかけます。

「オラには、そんな力は、あらへん」

クルトさんはこちらを向く気配はないですね。

見ている方向になにか楽しいものでもあるんでしょうか。

「それは残念です。しかし、あなたは行くしか選択はありませんよ。諦めてください。琴さん、転移準備をお願いします」

「オラは、行かないだ」

「あなたの意思の強さには感服しますが、死地を逝くのならば、楽しく行けるほうがいいかと思いますよ」

「死ぬ事が、楽しいなんて思うやつは、いないだ!」

「あなたの意識の向きを変えれば、楽しくなると思いますよ」

「オラは、お前とは違うだ!」

「転移陣、出来たにゃ」

琴さんの合図によって部屋の中が光ります。

地面には転移陣が引かれていますね。

「では、よろしくお願いしますよ」

「ぱ、ぱ?」

私は摩耶さんを転移陣に押し入れました。
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