妖魔06~晴嵐~
「クルトちゃん、琴は、丞ちゃんの悲しむことは嫌にゃ。それは吟ちゃんも悲しむにゃ。だから、琴は不幸になるかもしれないけど行くにゃ。クルトちゃんは、動かないでいると誰かを悲しませる事にならないかにゃ?」

「もう、誰も、いないだ」

「きっと、いるにゃ」

「お前に何が分かるだ!」

「分からないにゃ。分からないけど、いるにゃ。きっと、丞ちゃんも、待ってるにゃ」

「あいつが欲しいのはオラの力だけだ!都合のいいときだけ、オラを呼ぶな!」

琴さんはうつむき加減になって、クルトさんに背中を向けました。

クルトさんはどうやら自分の世界に浸りたいようですね。

私としては結論の出ない世界に浸るのはいただけないと思いますね。

「クルトさん、お汁粉とゲルパワーを迷うと売り切れになってしまうという事態に陥ってしまうんですよ」

「何が、いいたいだ」

「過去にお汁粉とゲルパワー、どちらか選ぶか迷っていた時がありました。そこで悩み続けたんですが、それ以前に財布の中に百円が入ってない事に気づきました。私は百円を摩耶さんに頂いて再び自動販売機の前に立ったんですよ。ですが、二つとも人気があったのでしょう、売り切れの赤い文字が輝いていました」

「その説明に、何の意味があるだ」

クルトさんに売り切れの恐怖を説いたのですが、判っていただけませんでしたね。

「ええ、判断の遅れは売り切れを意味するというとこでしょう」

私の活力となるお汁粉に手が届かなかった絶望は、私に後悔の二文字を植え付けましたね。

「オラが、うじうじしてるのが悪いっていいたいのか?」

「いえ、悩みは誰しもが持つ特権ですからね。ですが、判断をするならば早いほうがいいかと思いますよ」

「メガネの人はいいことを言うにゃ」

「お褒めにいただきありがとうございます。私としては売り切れの恐怖を説いただけに過ぎませんよ」
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