妖魔06~晴嵐~
「おい!まだ、まだだろ!」

「無闇に突っ込むべきではないのじゃ」

「ここで見過ごせるかよ」

俺は闇の能力を解放させる。

俺の中には郁乃母さんがまだいる証拠だ。

しかし、龍王は俺の腕をつかんだ。

「ここで、行くという事は死しか待っておらぬ」

「だけど、手遅れになる」

「そうでは、ない」

龍王の腕から何かが伝わってくる。

「おぬしは色々な妖魔を体に宿した。そして、制限されている器も捨てた。それがどういう事を意味するか」

「おい、最後みたいなことを言うな」

「おぬしも、次の段階へと向かうことが出来る可能性を秘めていると言う事じゃ」

説明が終わった頃には、流れてくる何かがなくなってしまった。

「さらばじゃ」

龍王の体が薄れていく。

「一つ、また完全に近づいた」

イヴァンが龍王を吸収したというところか。

「吟、一つだけ、言いたい事がある」

「アチシと子供を作りたいアルか?」

「今まで、お前には守られ続けてきた。今度は俺がお前を守る」

「まじめな奴アルな」

「全てが終わった時に、また」

「そう、アルな」

俺は詠唱破棄を行った術式を組み立てる。

俺が龍王から受け継いだのは知識だけではない。

そう、魔術を使える力も俺の体には備えられたのだ。
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