妖魔06~晴嵐~
俺は片手を上げて、詠唱破棄の魔術を組み立てる。

「『燕』!」

囲いの中から吟を俺の傍に転移させる。

囲いは魔法陣の変わりだ。

俺は吟の肩を抱き寄せる。

「お前、私を一人にさせるつもりか?」

詠唱破棄の魔術の連続で使用しすぎると、精神の消耗率が高い。

「絶対に、しないさ」

片手にあるのは光と闇がまじった交じり合った球だ。

「イヴァン、一つだけ言っておくぜ」

俺は球を投げる。

「盛り上がりがあろうがなかろうが、俺には関係ないんだ」

球をイヴァンの方向へと真っ直ぐに進んでいく。

イヴァンが消えて俺らの近くにいようと、球も消えてイヴァンの傍に現れる。

「そいつはお前を噛み砕くぜ?」

イヴァンが俺に一手を伸ばそうとした瞬間に、俺はバックステップで回避し、球がイヴァンに追いついた。

背中から這い出た手によって受け止めるが腕が消滅していく。

光と闇が出来る前に存在していた物とは、『カオス』。

人為的に作り出された『カオス』が今、目の前でイヴァンを食おうとしている。

「『空』」

腕の根元までカオスに食われたところで、イヴァンが自分の背後で亜空間を開く。

カオスは亜空間の中へと飛び込んでいった。

そして、再び亜空間が俺の右側から出てくる。
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