妖魔06~晴嵐~
「という事をロベリアが言ってるわ」

「不味いのう、原初なる者は不完全という事になる」

龍姫は親指を噛みながら、苦い顔をする。

「不完全だと、どうなるのよ?」

「心がない」

「心?」

「吟が担当していたのは、心じゃ、感情じゃ」

「それは、確かに不味いわね」

子鉄は再び気を引き締めた。

『無感情』がどういう物を担っているのか、子鉄は知っていたからだ。

「イヴァンという男に女神の力を使わせるのがいいのか。それとも、心のないメトロディアナが復活するのか。どちらにせよ、危ない橋というのには代わりはない」

「一難去って、また一難ってやつね」

今持つ物は風の能力だけであり、刀と鉄球は使えないでいた。

「あんたは、摩耶とか言ったわね?」

「何や?」

「出来るだけ子供達が動けるように、心をリラックスさせておいて」

「今の状況で、出来ると思ってるんか?」

「もしもの時、動けなければ死ぬだけよ」

イヴァンは狙うものが定まっていた。

しかし、メトロディアナは狙うものが定まっていない。

それは、無差別という事を表していた。

「下手に動かさないほうがいいという事もあるかもしれへんやんか」

「多分、メトロディアナって奴の攻撃は予想以上に違いないわ。そう何度も受け止められるとは思わないほうがいいのよ」

子鉄は千鶴のほうを見た。
< 261 / 278 >

この作品をシェア

pagetop