妖魔06~晴嵐~
千鶴の心の中。

黒く大きな箱がジャスミンの目の前にあった。

『これが、能力』

ジャスミンは不思議に思っていた。

半妖魔の能力といえど、箱にしまう物なのだろうかと。

『結果オーライね』

箱に仕舞う物なのだから、それなりの能力であるとは思っていた。

箱に触れた瞬間に、指に傷がついた。

『何、これ』

ジャスミンは黒い箱の危険さを身を持って体験する。

『時間がないのに、面倒な物があるのね』

箱を見つけた事も、指に傷がついた事もジャスミンは言わない。

それはジャスミン自身が千鶴のためだと思っての事だ。

しかし、ジャスミンの目はやる気に満ちていた。

『姉さん、私』

再び手を伸ばす。

箱に手が触れると、腕に傷がついた。

『負けない!』

箱の蓋を持つと体中に傷がつき始める。

『ぐうう!』

少しずつ開くたびに大きな傷が体を刻み付ける。

『私が姉さんを守る事を諦めるなんていうのは、絶対にないんだ!』

全てを開いた瞬間、ジャスミンの額から股にかけて一直線の傷が入る。

決して浅くはない傷だった。

『姉さん、私、やったよ』

ジャスミンはそこで倒れた。
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