妖魔06~晴嵐~
しばらく、ジャックは歩き続けた。

しかし、目的地に着くことはない。

今ある戦場は敵地のホームであって、ジャックにはアウェイな場所。

何の策もなしに敵地に乗り込むのは危険である。

行方不明になった後、ジャックがすぐに動けなかったのは怪我を負ったせいでもある。

それ以上に、一番必要な情報が不足していたからだ。

情報を制すれば、頭の切り替えしで可能な限り深手を負わせる事は可能ではある。

ではあるものの、情報を持ってしても、圧倒的な人海戦術の前では屈するしかない。

屈する事無く相手をねじ伏せるには、相手に存在する関節部分を付き続けるしかないのだ。

運動神経、頭脳、運のよさ、全てを併せ持った者でも限りなく勝てる確率は少ない。

それを承知の上で、ジャックは秋野湊を滅する事を選んだ。

軍を作らなかったのは、焦らなかったからではない。

余計な物を省いた結果である。

どこから情報が出回るか解らない今、同じ境遇のロックしか仲間と呼べる物はいない。

ジャックがロックに頼んだ事は、更に上の情報をつかむ事である。

世の中に完璧はない。

今ある情報でも、まだ足りない物があるかもしれない。

それを見通して、動かすしかないのだ。

ジャックは、無言のままに暗視ゴーグルのような物を装着。

周囲を見渡し、今の情報を取得する。

ゴーグルに見える先には壁のような物が連なっていた。

しかし、前に歩いてもぶつかる事はない。

壁の向こう側は、違う空間になっていた。
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