妖魔06~晴嵐~
「『ルール』手で触れた物は全て破壊できる」

手を前に伸ばし、暗視ゴーグルで見える壁に触れる。

壁は消滅し、裸眼でも目前の建物が見える。

「『ルール』生き物に対して傷つける行為禁止」

ルール変更の後に、暗視ゴーグルを外した。

森を抜け、建物の前に立つ。

建物は中世を思わせるかのような石造りになっていた。

広さは城くらいはあるだろう。

ジャックの周囲には敵だらけだ。

しかし、誰一人として攻撃しようとしなかった。

理由は目の前にあった。

死体が数体転がっている。

ジャックが来る前は息をしており、ジャックを狙っていた。

だが、ジャックを攻撃しようとした瞬間、息絶える。

『ルール』は破ってはならない。

ルールとは誰もが守るべき約束事。

破ればペナルティーが発動する。

ペナルティーとは、ルールから外れた行為が自分に返って来る。

男一人に数百の兵が恐れおののいている。

ジャックは何ら恐れる事無く、扉の前へと進んだ。

扉の前の兵士も近づくまいと、離れた。

懐から拳銃を取り出し、一発を扉の鍵を打つ。

扉を開き、静かに中へと入り込んだ。

薄暗闇の中に廊下があり、両壁にはランプが奥まで連なっていた。

足音を殺しながら、ジリジリと確実に秋野湊に近づいている。
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