妖魔06~晴嵐~
階段を昇り、更に近づく。

秋野湊の位置特定は、ジャックの内部にいる『女』がやっていた。

スムーズに進む。

それが逆に怪しさを産んでいた。

しかし、進まなければ話も進まない。

ジャックは慎重さと大胆さを維持しつつ、精神は波風立つ事はない。

何事に対しても、常に一定を保つ。

それが修羅場を潜り抜け、得たスキルでもある。

周囲に敵の影はない。

それどころか、城に入ってから見ていない。

秋野湊に自信があるのかどうか。

ジャックには関係のない話である。

片手を拳銃に沿え、すぐにでも発砲できる準備は整えていた。

木製の扉の前。

たった木の板一枚を隔て、双方に敵対した者同士がいる。

妖魔に全てを奪われた者。

全てを奪い頂点に立った者。

差は歴然としていた。

だが、それは肩書きで表しただけの物である。

ジャックは何発か扉に打ち込み、蹴破る。

「随分と、乱暴ね」

自分を殺しに来た人間がいるのにも関わらず、余裕の笑みを崩さない秋野が大きな机と共に設置された椅子に座っていた。

「あなたと顔を合わせるのは初めてかしら」

拳銃を上げたまま、ジャックは停止している。

部屋には入ろうとしない。

「あなたの望むものは、私の命?」
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