妖魔06~晴嵐~
ジャックの背後から飛び出るナイフの刃。

それを銃で受け止める。

ジャックと並んで傍にいるのは、闇に潜む男だ。

移動はしていない。

ずっと背後に潜んでいた。

ジャックはそれを知っていた。

女のサーチ能力は並ではない。

例え闇にいたとしても、それを無効化するほどの目を、能力を持っている。

「『ルール』斬撃不能」

詠唱と同時に両手に拳銃を携える。

闇に潜む男は再び闇の中へと隠れた。

銃口を向けているのは、闇に潜む男に秋野だ。

秋野は笑っている。

ジャックは秋野の能力を把握している。

だからこそ、ジャックは簡単には秋野を殺せない。

何故、簡単には殺せないか。

理由は簡単である。

時を戻す能力を持つ秋野は自分に対して能力を発動することが出来る。

どの時間帯に戻すかによってジャック自身に火の粉が降りかかる。

だが、それは詠唱をしてこそ出来る事である。

ジャックは両手の拳銃を闇に撃つ。

しかし、弾丸は虚しく闇に消え行く。

ジャックは戦いながらにも思った。

暗闇に潜む男の弱点は知っている。

すでに情報は得ている。

しかし、暗闇に潜む男に対して勝ったとしても、秋野自身を封殺しなければ何の意味もない。

ジャックは考える。

秋野と自分に対しての違いを。

そして、秋野に能力が通用するのかどうかを。

もし、時間を戻す以外の方法で、能力を封殺されたとするのならば、ジャック自身のやろうとしている事も意味がなくなってしまうだろう。
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