妖魔06~晴嵐~
「靜丞さん」
冬狐はスチール缶を片手で握りつぶす。
「何じゃ?」
「これからどうするの?」
さほど興味はないものの、冬狐は靜丞に尋ねた。
「余生を花壇でも作って過ごそうかのう」
靜丞は燕に言われたとおりの生活も悪くないと踏んでいた。
「あなたの大事な葉桜千鶴の事はどうするのよ?」
「ワシが守らんでも、千鶴は大丈夫じゃ」
「何か根拠でもあるの?」
「近親相姦が大好物の小僧が何とかするわい」
「葉桜、丞ね」
「冬狐ちゃんも、そう思っておるんではないか?」
「死人よ」
「あやつは約束を果たしておらん。守ると言ったからには責任を取らなければならんよ」
「妖魔でも出来る事と出来ない事があるわ。もし、肉体を蘇らせる能力があったところで、それは『葉桜丞』という個体ではない。ただの屍に過ぎない」
「小僧は更に上の行動を取る。自分以外の記憶を奪い、時間を元に戻したようにのう」
「都合のいい偶然は長くは続かない。だからこそ、葉桜丞は死んだ」
「果たして偶然といえるか?」
「どういう事?」
「偶然の連続は必然といえる。小僧の都合の良い偶然はもはや都合の良い必然」
「蘇る事も必然だとでも?」
「そこまでは分からぬな」
「信じるに値しない話ね。何の確証も根拠もない」
「そうじゃな」
「でも」
潮のニオイを乗せた風が冬狐の髪を撫でる。
「それを望んでいるのは、靜丞さんだけではないのかもしれないわね」
冬狐はスチール缶を片手で握りつぶす。
「何じゃ?」
「これからどうするの?」
さほど興味はないものの、冬狐は靜丞に尋ねた。
「余生を花壇でも作って過ごそうかのう」
靜丞は燕に言われたとおりの生活も悪くないと踏んでいた。
「あなたの大事な葉桜千鶴の事はどうするのよ?」
「ワシが守らんでも、千鶴は大丈夫じゃ」
「何か根拠でもあるの?」
「近親相姦が大好物の小僧が何とかするわい」
「葉桜、丞ね」
「冬狐ちゃんも、そう思っておるんではないか?」
「死人よ」
「あやつは約束を果たしておらん。守ると言ったからには責任を取らなければならんよ」
「妖魔でも出来る事と出来ない事があるわ。もし、肉体を蘇らせる能力があったところで、それは『葉桜丞』という個体ではない。ただの屍に過ぎない」
「小僧は更に上の行動を取る。自分以外の記憶を奪い、時間を元に戻したようにのう」
「都合のいい偶然は長くは続かない。だからこそ、葉桜丞は死んだ」
「果たして偶然といえるか?」
「どういう事?」
「偶然の連続は必然といえる。小僧の都合の良い偶然はもはや都合の良い必然」
「蘇る事も必然だとでも?」
「そこまでは分からぬな」
「信じるに値しない話ね。何の確証も根拠もない」
「そうじゃな」
「でも」
潮のニオイを乗せた風が冬狐の髪を撫でる。
「それを望んでいるのは、靜丞さんだけではないのかもしれないわね」