妖魔06~晴嵐~
「クルト、あなたは私と来るべきよ」

「何を、言っているだ?」

「あなたの事を認めてあげるといっているの。あなたが望んでいた事でしょう?」

そう、認めてもらうために頑張っていた。

願いが叶った。

しかし、姉の言っている事には、どこか危険な雰囲気を纏っていた。

「どこに行くだ?」

「あなたが、所属した世界とでも言おうかしら?」

その一言で、姉がどこに所属しており、どれだけ危うい存在かを理解した。

「オラは、戻らない」

「私の誘いを断るの?」

「あんたは、何も、わかってない。何もだ!」

あんたという言葉に反応を示したのか、コメカミが動く。

「何をしても無駄だという事を理解している」

「だから、それで、あの男の下で働くなんて間違っているだ」

姉の事は嫌いだった。

だけど、それでも、血の繋がりがある。

争う事は、心のどこかで拒んでいた。

「クルト、あなたは、今の生き方に満足しているというの?私にはそうは思えないわ」

姉は、自分を見てきただけあって知っている。

例え、遠く何年も離れていたとしても、姉は自分の本質的な部分を見抜いている。

「そんなもの、どんな生き方にもありはしないだ」

欲のある生き物自体に、満足はない。

満足と思っていたとしても、それは通過点に過ぎないのだ。

一つが終われば、別の何かを欲しくなる。

だから、満足など存在しない。

クルトはそう思っていた。
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