妖魔06~晴嵐~
クルトは動けない。

「助けを呼んでもいいわよ。ソレも甚振ってあげるから」

姉は狂気の笑みを見せる。

「でも、今はあなたしかいないから、あなたを徹底的に甚振ってあげる」

「あのさ?後輩をいじめるのは、止めてくんない?」

突如、上空から人影が、姉を目掛けて急降下してくる。

姉は、軽く回避した。

「ふうん、あなた、クルトのお友達?」

姉の立っていた場所にいたのは、着物を着たクルトの先輩である。

「友達じゃない、先輩よ」

髪を靡かせながら、姉を見つめる先輩。

「都合がよく登場したわねえ?」

「都合よく登場してあげたのよ。後輩がどこまで出来るか見ててあげたの」

「結果は最悪だったね」

「そうでもないの」

「何か、いい事でもあったのかしら?」

「クルトは家族思いのいい後輩ってところ」

先輩は苦しんでいるクルトをチラ見する。

「でも、気持ちを理解出来ないあなたを見るのは、胸糞悪いね」

「私は最高よ?これがよく言うハイって奴かしら?」

いつもより口を大きく開きながら、姉の表情は喜びに満ちていた。

「ストレスを発散できる場所があるって素敵ね」

先輩は仕事場のストレスが溜まりに溜まっていた。

指を鳴らしながらも、戦闘の準備を行った。

「クルトと違って、あなたは甚振り甲斐がありそう」

「ま、全然嬉しくないけどね」

軽くステップを刻み、先輩は動き出した。
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