妖魔06~晴嵐~
「ワシが、龍姫の親じゃからのう」

「げ」

思わず、変な声が出てしまった。

龍姫の親という事は、龍王なのだろうか。

しかし、見れば見るほどに、普通の爺さんにしか見えない。

「分かっておる。そなたが、我が愛娘に手を付けた事もな」

言い訳はできない。

全て事実なのだからな。

「許しはせんといいたいところじゃが」

「何?」

「孫娘のわがままにつき合わせてしもうたからのう」

龍王の表情は柔らかくなる。

「迷惑をかけたのは俺だ。それに、龍姫には俺に、いや、俺達を生かしてくれた。自分に何の利益も生まないとしっていても、俺達の傷を、癒してくれたんだ」

戦いの中で、どれだけ龍姫には世話になっただろう。

一言では表せないほどの感謝がある。

「俺は死んでしまった。感謝の言葉を言う事無く、それが、心残りではあるけどな」

「龍姫がそなたの傍にいたいと思う気持ちがあるのも、分からぬではないな。じゃが、複数の女を同時進行するという腐った性根は認める気はないがな」

許しを請うつもりはない。

正しくはなくとも、自分の意思でやった。

罪は、別の形で償うしかない。

出来るのならな。

「それで、何で郁乃母さんや、龍王がここに?」

「それは、あなたの顔を見るためでしょう。そして」

「そして?」

「そなたに力を貸すためじゃ」

「力を?」

「うむ」

二人は、何故か微笑む。

「ちょっと待て、何か、今から嫌な事を言おうとしてないか?」
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