妖魔06~晴嵐~
「私達にとって、嫌な事ではないでしょう」

「どういう事だ?」

「ちょっと輪廻の輪に戻れなくなるだけ」

輪廻の輪といえば、生まれ変わりだの何だのという事が想像がつく。

じゃあ、今からやろうとしている事は、母さんは極楽にいったのに生まれ変わりはないという事になるのか。

「何で、そんな事をするんだよ?」

「生きている、人を守るためでしょう」

「皆が死ぬかのような言い草だな」

「今のままいけば世界自体がどうなるか、解らないでしょう」

「イヴァンか」

イヴァンは原初に近き者達のアクセサリーを全て手に入れた。

「イヴァン=カナシュートは確実に力を蓄えている」

「奴が、力を手に入れるって事かよ?」

「原初なる者に近づきつつある」

「原初とは、全てでしょう」

全てという事は、今要る俺達の世界も終わりを告げるという事なのかもしれない。

「郁乃母さん達のやろうとしてる事で、美咲達は救われるんだな?」

「でも」

郁乃母さんが俯き加減になる。

その表情で何が

「分かった」

現世に行くという事は、それだけのエネルギーが必要になるんだろう。

だから、郁乃母さんや龍王の爺さんが俺に力を貸す。

しかし、果たして二人だけのエネルギーで現世に辿り着いたとして、その後は完全に復活する事は出来るのか。

否、死人が生きる者になれるわけがない。

死人は死人だ。

現世での勤めを果たせば、俺自身も輪廻の輪から外れてしまうに違いない。
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