妖魔06~晴嵐~
「輪廻だの何だのは知ったこっちゃないが、俺だって好きな人達を守りたい気持ちはある」

世界がどうだの言う気はないが、好きな人達を守りたいんだ。

俺は死んでいる。

ラインがいなければ周りにいる奴等のように、意思のない人形になっていたところだ。

確かに、輪廻転生し、再び世界に降り立つという事は素晴らしい。

しかし、それは『俺』じゃないし、世界がなければ意味はない。

それに、イヴァンとの決着をつける事は、宿命めいたものを感じる。

葛藤など必要ない。

俺の意思は、決まっている。

イヴァンを、噛み砕く。

「はは、郁乃母さんが気に病む事はねえさ。それが、俺のやるべき事なんだからな」

泣いてても始まりはしない。

だからこそ、笑うんだ。

「丞」

横から拳が飛んでくるのを、受け止めた。

「吟?」

「お前は、私を独りにさせるのか?」

目は、涙が浮かんでいる。

吟の涙は初めて見る。

怒りと悲しみを称えているようにも見えた。

記憶がないから、感情に素直なのかもしれない。

俺は頭をかきながら、吟に向き直った。

「お前は私を好きだと言った?その言葉は、嘘なのか?」

以前の吟では考えられないくらい、素直だ。

いつもは気持ちを隠していただけなのかもしれないな。

「一緒に、来るか?」
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