妖魔06~晴嵐~
「丞、その意味を解っていっているのでしょうか?」

「ああ、解ってる。吟、お前は自分の命がここで途切れたとしても、それでいいか?」

「お前は、馬鹿だ」

俺を、包み込むように抱きしめた。

「ええ?」

「聞く必要のない事を聞くからだ」

「そうか」

吟の頭を撫でながら、俺は心の準備を行った。

これから行く場所は本当の片道切符になるだろう。

俺と言う個が消滅を果たす事になる。

「それで、俺が奴に勝つ手段というのは、あるのか?」

「方法は、丞がイヴァン=カナシュートと融合する事でしょう」

「嫌過ぎるな」

女の子なら嬉しいんだが、男の精神と融合なんて鳥肌が立つ。

「でも、その方法でしか、彼の動きを止める事は出来ない」

「それでも、動きを止めるだけなのか?」

「ええ、あなたが止めを刺す事は出来ないでしょう」

「そうか、なら、誰が止めを刺すんだ?」

「千鶴」

「千鶴が?」

「ええ」

「簡単に言うな」

確かに、千鶴には力があるかもしれない。

当初、イヴァンは千鶴を狙っていた。

それは、千鶴が原初なる者と同等の力があったとしてもおかしくはないと踏んでいたからだろう。

しかし、郁乃母さんが言うには俺がイヴァンの動きを止めなければ、勝てないとの話だ。

だとすれば、原初なる者の力のほうが上になる。
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