妖魔06~晴嵐~
しかし、千鶴は自分自身の力の事を知らない。

知ったとして、果たして使えるかどうか。

確かに、一度は戦闘に参加した。

ジャスミンと契約してな。

戦いというものが、どんな物か理解している故に恐怖もある。

責任、恐怖、色々なプレッシャーを背負う事となるだろう。

「丞がやるでしょう」

「俺が?」

「丞は、随分と千鶴と仲がいいから出来るでしょう」

さすがに、知られてるよね。

「郁乃母さん、俺は兄貴として失格かもしれない」

郁乃母さんは俺の頬に一発ビンタをかます。

「決して正しくはない事でしょう。例え、千鶴の心を満たすためとはいえ、やってはいけない事でしょう」

「まあ、な」

結構ダメージの大きい頬を摩る。

郁乃母さんも、真剣に千鶴の事を考えている。

そりゃ、兄と妹が行為に及ぶなんて、誰も思っちゃいないからな。

「でも、今は、あなたのやった事が、逆に希望へと繋がるでしょう」

「千鶴の気持ちを利用しろって事、かよ?」

「そう、取られてもおかしくないでしょう」

「くそ」

俺が出来るのなら、何だってやってやる。

千鶴のコアを俺が使えば?

だが、果たしてそれで上手くいくのか?

「千鶴以外に、コアを扱える奴はいないんだな?」

「そうなるでしょう」

「何でだ?」

「千鶴のコアは特別製でしょう。他の妖魔が使おうとすれば、拒絶反応が起きて、暴走が起きるでしょう」

「千鶴以外には、使えないか」

説得するしかないのか。
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