妖魔06~晴嵐~
俺は拳を握る。

「話をするのは少し遅くなるかもしれねえな」

「ワラワがやる」

「いや、ここで徹底的にねじ伏せる」

掌に拳を叩いた。

「お前とやるのはいいが、条件がある」

「何?」

「能力無しの素手ごろだ」

「そんな条件を俺が飲むと思うか?」

「お前は妖魔なのに人間の俺に能力を使わなけりゃ勝てないのか?」

刃は目つきを変えた。

「テメエ、舐めた口を聞くじゃねえか」

「刃さん、兄さんとやるの?」

「あの野郎は俺がやらなけりゃ気がすまねえん」

憤怒に満ちた顔、よほど俺に負けた事が悔しいのか。

俺が素手ゴロにした理由。

死人である俺とロベリアが合体できるかどうかわからなかったからだ。

もし、出来なかった場合、俺は奴の能力と向き合わなければならない。

身体能力、能力、どちらも厄介で人間の状態の俺では両方を相手をするのは不可能に近い。

だが、身体能力のみならば、まだ勝ち目はある。

「全く、人生って奴は、回り道が付き物だな」

軽くステップを踏んだ。

次の瞬間、刃が妖魔の最大限の力を使い、動く。

右からの拳がフック状に飛んでくる。

しかし、何故か、その拳がギリギリ見切れる。

俺は背を逸らし、かわす。

そうか。

俺は母さんたちの命を貰ったから、ある程度の力の上昇が見込めたのか。
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