妖魔06~晴嵐~
善意でやった事が間違いだという事はよくある話しだ。

しかし、今回の善意が間違いなどというのは、どう考えても有り得ない話だ。

人間達に冷静さを欠いているとはいえ、二人を傷つける行為を許す事は出来ない。

「あなた」

「王子様」

過去に起こった惨劇を、再び繰り返すわけにはいかない。

彼女達には、少しでも幸せになって欲しいんだ。

「もう、人間達からは痛い思いをさせねえよ」

ジャスミンが俺の左側に立った。

「ま、人間なんかに負けないけどね」

ロベリアが右側に立った。

「私はあなたと共にあります。だから、一人で戦わないで」

「本当、優しい奴等だな」

最後に子鉄が俺の前に背を向けて立った。

「ここは私が収めるわ。アンタ達は行くのよ」

「子鉄」

子鉄から俺に紙を投げられる。

「そこには、調べていた資料がある」

「資料だって?」

「アンタ、イヴァン=カナシュートを追ってるんでしょ」

「何でそれを?」

「アンタの噂は退魔師にも流れてるのよ」

「なるほどな。しかし、誰がこれを?」

「風間、よ」

てっきり姿を消していたかと思いきや、裏で行動していたとはな。

「礼を言っといてくれ」

「ええ」

「子鉄、お前も、ありがとうな」

「ま、アンタはさっさとイヴァンをどうにかするのよ」

「ああ、行くぞ」

俺はロベリアとジャスミンの手を引いた。
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