妖魔06~晴嵐~
「んぐ」

進もうとしたところで頬にジャスミンの拳をもらった。

痛みは無いのでなんともない。

「姉さんがそういうんだから、我慢してあげる」

ジャスミンは特に嫌そうな顔はしていない。

視線は合わしてくれないけどな。

「ありがとうよ」

「落としたら、ただじゃすまない」

「落とさない、誰もな」

何故、ジャスミンに対してお姫様ダッコしたくなったのか。

スキンシップという名目はあるけど、普通ならロベリアでも可笑しくはないはず。

「ジャスミン、ロベリアを、頼んだ」

ロベリアに聞こえない声でジャスミンに言う。

「何よ、それ」

「お前しか、いねえんだ」

「そんな事、最初から分かってるわよ」

「だよな」

本当に仲のいい姉妹だ。

正面から、人影が歩いてくる。

「妖魔か」

霧の中にいるのにも関わらず、暴走を起こしている様子はない。

「お前を、世界から消しに来た」

赤い学ランの男は無表情で立っている。

「そうかい」

ジャスミンを下ろして、俺は前に立つ。

「お前等のボスは、どんだけ引き伸ばそうとするつもりなんだよ?こっちは、お前等に付き合うのもうざったいんだけどよ」

構えようとした俺の真下に魔法陣が出来上がる。

「ち!」
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