妖魔06~晴嵐~
しかし、どこにいるのだかな。

「アホ・マナフの野郎、必要のない時にしか出てこねえんだよな」

と思っていたところで、家の塀を磨いている男と女三人がいた。

一人はよく知る黒のスーツで、隣には制服の女生徒。

後は能力を無効化してしまいそうな女性に、サバイバルでもしそうな迷彩服を着た女性。

「パパ、これでウチラ、ボランティアマスターやで」

「ええ、これも全て、ハピカの力ですね」

研磨剤入りの歯磨き粉で何やってんの、あんたら。

「これで世界の人達が少しでも幸せになれるといいですね」

「大丈夫や、ウチラの愛は永遠なんや!」

「恩師摩耶!私はあなたの愛に救われました!」

いや、世界関係ないし、お前等の愛なんて届くわけないだろうが。

こんな状況なのに、お前等何やってんだよ。

俺達三人が後ろにいるというのに、全く気付いちゃいない。

「というか、マリアに何やらしてんだ、お前は」

「おや、葉桜君じゃないですか」

雑巾と歯磨き粉のチューブを持ちながら、俺達の方向に振り返る。

都合は良いとは言え、能天気さには毎回ながら呆れてしまう。

「いやあ、こんな霧の日には掃除したくなりますよね」

「丸っきり繋がりがねえだろうが!」

「おや、こんな日だからこそ、周囲は常に綺麗であるべきだと思うんですよね」

「だーかーらー」

「王子様、とても仲がいいです」

ロベリア、何言ってるのよ。

「何や、あんたら、ウチラの掃除の邪魔するんやったら、どっかいってんか」

「あら、あなた可愛いわね」

ジャスミンは背後から摩耶を抱きしめる。

お前、ロベリア一筋じゃなかったのか。
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