モンパルナスで一服を
十分もすると、自信作とも言いたのか、男は満足そうに絵を眺めた。

絵が完成した。



椅子から立ちあがり、ベッドへと向かう。

しばらく掃除をしていないベッドには皺(しわ)も黄ばみも目立つ。

まるで、黄ばんだ色が元々の色であるかのように。

それでも男の休息の場はベッドの上であった。



あと一歩で横になれるところで、男は口に咥えていた煙草に気付く。

二本の指でそれを摘むと、左胸のポケットにある形の崩れた煙草の箱へと挿しこんだ。

箱の中でカラカラと音がする。

一人っきりの部屋を誇張するかのよう、どこか虚しさが漂った。

それでも男は孤独感など苦にしない。

男は、一人という空間を楽しみ、こよなく愛しているのだ。

時計の針が二時を指しているのを確認すると眠りについた。暦は土曜日である。
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