ゴハンの上にマネヨーズ
ちょうど目線の先にある僕の股間の膨らみに気づいたのか、それとも犯すような僕の視線が気に食わなかったのか。

電車が次の駅に滑り込むと女子高生はすっと立ち上がり、僕を睨むようにして電車を降りていった。

睨むといっても一瞥されただけなのでよく判らなかったが、女子高生の眼球の表面には、明らかに軽蔑の感情が浮かび上がっていた。

なんとも言えない気まずさに気後れしてしまった僕を尻目に、空席となった目の前の座席には、僕の横に立っていた男が座ってしまった。

席に着いた男は、まっすぐ正面を見つめていたが、その視線の先にあるのは僕の股間だった。僕が、まだ膨らみの治まっていない股間に気づきはしないだろうか、とそわそわしていると、

「何してんねん、ヤザワ」

と目の前の男が声を掛けてきた。

「えっ、そ、そんなことないっすよ」

不謹慎な勃起を注意された、と僕は気が動転して意味不明の返答をし、さらに自分の不自然な言動に気が付いてどっと汗が噴き出して、どうやってこの場を取り繕えばいいのかと軽いパニックになったが、

目の前に座っていたのはミヤシタだった。

「ミ、ミ、ミヤシタやん」

「なんで、そんなに汗かいてんの?」

ミヤシタは不思議そうに聞いた。どうやら、勃起の件には気づいていないらしい。

「いや、なんか暑くない?あ~蒸し暑いわ」

「なんか変やな」

ミヤシタはそう言って、僕を訝しがった。僕は、ミヤシタの注意を、僕の股間から引き離そうと、とっさに言葉を発した。

「お、おまえさ、ヒメジじゃなかったっけ」

「ああ、オオサカの本社に戻ってきてん。今はイマザトに住んでる。お前はまだ、シンフカエか」

「隣駅やん、いつからよ?」

「半年くらい前かな」

「半年前!なんで連絡せえへんねん」

「なんでって、よう言うわ。おまえかって、俺がヒメジにおる時、全然連絡してけえへんかったやないか。だいたい俺はな、朝から目の前の姉ちゃんをやらしい目で見て、チンコ勃起させてるような暇な奴とは違って、いろいろと忙しかったんや!」

ミヤシタは、わざと周囲に聞こえるような大きな声で言って、ネタネタ、といやらしい笑顔を作って僕を見上げた。

「おまえ、頭はたいたろか」

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