二人の日常
 男は、ひらりと、塀から飛び降りた。
 「人をむやみに、疑うのは、感心しないね」
 そう言って、男は煙管を吸った。風に煽られた、髪が乱れて、前髪が少し、跳ねていた。
 少女は、男の、前髪を見ながら、自分の髪を撫でつけた。
 「人の髪を見て、自分の髪を直すのは、別に構わないけどね、君、直す程、髪の毛無いよ」
 そう、少女の髪はショートカット。風に煽られたところで、それほど気にはならない。
 「ん、まぁね」
 少女は、それでも髪が気になって、頭の天辺を弄りながら言った。そして不意に、少女は自分が、敬語で話していない事に気付いた。普段、こんな事は決して無い。初対面のそれも年上の人間相手に、敬語が抜けるなんて・・・。少女は、声には出さず、驚いた。
 「あっ」
 男が、声を上げてから、苦笑いを浮かべて、頭を掻いた。何事かと、少女は男を見遣る。
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