【短編】瞳
「がぁーくぅ♪」
「何?」
「今日、一緒帰ろ♪」
「無理」
「えー! 何でー?」
不安になる原因は、これ。
隣のクラスの原田さん。
凄く綺麗で、学年で1・2を争う美人。
矢野君が好きで、毎日の様にうちのクラスに来る。
こんな綺麗な人にモテる矢野君も凄いけど。
「また来てんじゃん、原田」
波ちゃんが、横目で原田さんを睨みながら私の前に座った。
「なっ波ちゃん」
「学も妃芽が彼女だってハッキリ言えばいーのに」
「あは……あんな綺麗な人に私が彼女だなんて言えないよ?」
「は?!」
大きな瞳をクリクリさして、波ちゃんが私を見る。
「妃芽? あんたは、かなり可愛いのよ?
わかってる? 綺麗系じゃないだけで可愛系なのよ!」
力説する波ちゃん……。
いつも私を励ましてくれて優しい波ちゃん。
やっぱり波ちゃん大スキ!
こんな事を言ってくれるのって波ちゃんだけだもん♪
「桜田……」
「あ、まっ待ってね」
慌て鞄を持って波ちゃんに、バイバイと手を振った。
これは“帰る”って合図。
矢野君は、毎回帰る用意早い。
私なんて待たせてばっかだし。
下駄箱で、上靴を履き変えてたら……
また、あの声が聞こえた。
「がくぅー、一緒帰ろって言ったじゃん?」