【短編】瞳
見上げた矢野君と、重なる唇。
離れた唇の変わりに、くっつく額。
離れた唇が、後数センチで着くくらい近い。
「もう変な事で悩むなよ?」
「え……?あ……うん」
「俺、言われねーと女心? てのわかんねーし」
だから
『女ってわかんねー』
って言ってたのかな?
「ん……ごめんね?」
「して欲しい事も。
多分、嫌な事もわかんねーから」
「じゃっじゃあ、原田さんと……腕組まないで欲しい」
「腕なんて組んでたか?」
せっかく勇気を振り絞って言ったのに、帰って来た言葉は、私の悩んだ事をちっぽけに思わせた。
やっぱ女ってわかんねー。て悪戯に笑みを零してた。
-END-