【短編】瞳
-GAKU-
「妃芽、行くよー」
「はぁーい! ……うぁっ」
波に呼ばれて慌てたのか、机の上の物を全部落として必死に拾う……
俺の彼女、桜田妃芽。
毎日毎日、鈍くせぇ。
んとに……
「見てて飽きないよね、妃芽ちゃんて♪」
俺が思ってた事を、声に出す准。
「馬鹿なだけじゃん?」
―ゴンッ
「ってぇ……」
頭を押さえながら、殴った本人を睨んだ。
「可愛いって思ったくせに。
素直になるんじゃなかったけ?」
そうだよ?
俺は、素直になるって決めたんだ。
桜田に……素直になるって。
決めたばっかだったのに。
でも、今のは准が先に言うから。
悪いのは、准じゃん?
勘違いされねーように言うけど。
決して俺、優しくないんじゃない!
決して俺、素直じゃない訳でもない!
ただ……ただ桜田の前だけは、駄目なんだ。
素直になれないってか。
素直じゃないってか。
だからっ!
准に宣言したんだ。
この年でダサイけどさ?
こーでもしなきゃ……一生無理な気したんだ。
だから、俺は素直になる。
……なるべく。