【短編】瞳



「桜田……」

「あ、まっ待ってね」



帰る時、俺はわざと早く桜田んとこに行く。

始めは、桜田が帰る前に声かけなきゃって思ってただけだったんだけど。


最近は、この必死に用意する桜田が可愛いから。
少し赤い顔して慌ててる桜田が可愛いくてさ。


本当、必死で慌ててんのに……トロイ(笑)



「ご……ごめんね? 帰ろっか?」



すげぇ笑顔で俺を見る桜田に、毎回ドキドキさせられる。



「あー……うん」



そんな笑顔を見たいくせに、向けられると戸惑ってしまう。

瞳を逸らしてしまうんだ。





「……でね? ……で……なんだって」



すげぇ笑顔で話す桜田の顔。

んな楽しいのかよ?(笑)



「矢野君……?」

「え?」



真っ直ぐ見る桜田に、またドキドキする。



「で……どう思う?」



はぁ?


突然の問いかけに頭の中は大パニック。


何か質問してたのか?
やべぇ……。
全く聞いてなかった!


まさか、桜田の笑顔に見取れてました。


なんて言える訳ねーし。
さすがの素直も……これは違うだろ?



えーっと……



「……いーんじゃね?」



これで、どうだ!?



俯く桜田を見る俺に、
にっこり顔をあげて笑った桜田。


よし♪
うまくいった!




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