【短編】瞳
「そか……」
あれ?
何か寂しそうじゃね?
哀しげってか。
俺、間違った?
いや、でも笑ってたよな?
はぁー……話ちゃんと聞いとくんだった。
それから普通に、多分普通に話てた桜田。
気にし過ぎか?
桜田の家ん前に着いた時、
「じゃーな」
「あ、うん……ありがと」
いつもなら、これで帰るんだけど。
俺の制服の裾を引っ張る桜田に、驚いた。
え……?
「さっきの……本当にいいんだよね?」
「さっきのって?」
疑問系に疑問系で返す。
俯いてた顔を上げて笑顔で、
「そー……だよね。忘れちゃってる位だし」
「え? 何が?」
「ううん。さっきも言ったけど……1日だけだから。じゃ、また月曜ね」
そう言い残すと、笑顔で家に入って行った。
……1日だけ?
さっき?
話した?
あぁっ!
さっきの俺の聞いてなかった話か。
何だったんだろな?
……笑顔だったよな?
桜田が俺を引き留めた理由なんて考えもしてなかった。
桜田が笑ってればいい。
それだけしか考えてなかった。