【短編】瞳
「矢野君?」
「学って呼んでたくせに」
腕の中に居た桜田が、俺の胸を力いっぱい押して俺の顔を見上げた。
「いつ?! いつ言ってた?!」
真っ赤になって必死な顔。
「寝てる時」
「うわ~!」
俺を見上げてた顔を下げて、また大人しく胸の中に戻った。
「駄目なの? 学じゃ?」
「え? あ? そんな事ないんだけどね?」
明らかに焦ってるし(笑)
「じゃ、いいじゃん。学で。
俺も妃芽って呼ぶし」
「うん。でも……学、今日何だかいつもと違くない?」