君の胸に鳴る音を、澄んだ冬空に響かせて



「ごめん、な」


決して江口さんのせいじゃないのに。

あたしを掻き込むように抱きしめながら、、、あたしは全て腕の中にあるのに。


まだ足りないのか、まだあると思ってるのか、、、この自己中オトコ。


「何があったか、言って」

「…イヤ」


「明、、、言って」

…あれ?…今、明って言った?


驚いて顔を上げると、そこには悲しそうに笑う江口さんの顔が見えた。

その顔が近づいてきたかと思ったら、あたしのまぶたに、柔らかい感触を落として行った。


「言いたいことを言えれば、元カレを忘れると思ったし、そいつも離れていくと思った。でも、そうじゃなかったんだろ?」



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