君の胸に鳴る音を、澄んだ冬空に響かせて
「助けて!」
弾かれたようにバイクを降りて、全力疾走する江口さん。
いつもゆったり歩くもんだと思ってたから、意外なくらいの足の速さに、一瞬この、絡み付いてくる男の存在を忘れてしまった。
「てめぇ…っ」
ガッという音と同時に、あたしを押さえつけていた力が離れた。
よろけて崩れ落ちた体を、江口さんの腕が受けとめる。
「下がってろ、こいつだろ?」
「…うん」
…こいつが早坂だろ?と言いたかったのが、すぐにわかった。
「なんだよ、あんた。関係ないだろ」
「悪かったな、それがあるんだよガキが」