君の胸に鳴る音を、澄んだ冬空に響かせて



「あの、、、」

言わなきゃ。
だけど、だんだん怖くなってきてしまった。

何が怖いのか、わからないけど。
嫌われてしまうかもしれないこと?
めんどくさいやつだと思われてしまうかもしれないこと?

ぐるぐる考えている間に、いつの間にか涙が出てきた。

「え?ごめん、どうしたの?」

奏が謝ることじゃないのに。
あたしの方が、ごめんなのに。

「違う。ごめん、はあたしなの。急だったから、びっくりして、でも、恥ずかしくて…」

なにをいってるのかさえ、まとまらなくて。
涙は勝手に流れていく。


「ごめ…」

再度謝ろうとしたけど、最後まで言わせてもらえなかった。

頭を後ろからがっちりつかまれて、涙でぬれた顔はぎゅっと奏の胸に押し付けられていた。



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