君の胸に鳴る音を、澄んだ冬空に響かせて



悔しくて俯いていたら、急にフワッと体が浮いたのがわかった。


「何すんのさ!離せ!」

浮くだけじゃなかったんだ、この人、人を抱っこしながらクルクルクルクル…

「振り回すなぁ!落ちる!落ちるって!」

「残念、落としません」

全っ然、残念じゃないですから。
落ちたくないから言ってんだって!

「こんの、自己中オトコ!」

「ありがとう、明ちゃん」


………っは?

あたしを抱っこしながら砂浜を歩く江口さん。
バイクまでたどり着いて、あたしをバイクにまたがらせる。

あたしにヘルメットをかぶせながら、彼は満面の笑みをあたしに投げ掛けた。



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